ポケットや小型バッグに収まるサイズで、Windowsをフルに動かせる超小型PC「UMPC」。
ゲーミングからビジネス、出先のクリエイティブ作業まで幅広い用途で活躍し、ここ数年で性能と使い勝手が劇的に進化しました。
本記事ではUMPCの基礎知識を徹底解説したうえで、最新トレンドと比較軸を明確化し、2025年におすすめモデルを厳選して紹介します。
後半には「タイプ別の選び方」や「eGPU(外付けGPU)活用」まで踏み込んだ実用情報もまとめました。
はじめての一台選びから買い替え検討まで、これだけ読めば迷いません!
UMPCとは?サイズの常識を壊す超小型PC

UMPC(Ultra Mobile PC)は、おおむね7〜10インチ級のディスプレイとフル機能のWindowsを備えた超小型PCの総称です。
近年はAMDのRyzen 7 7840Uや8840U、Ryzen AI 9 HX 370、そしてIntelのCore Ultraシリーズなど、ノートPC顔負けの高性能CPUと最新の内蔵GPUを搭載する機種が主流です。
ゲーム向けの一体型コントローラーを備えるハンドヘルド型と、キーボード付きのクラムシェル型に大別され、据え置き化を想定したドックや外部GPU(eGPU)対応の拡張性も注目されています。
UMPCが注目される理由(メリット・デメリット)

- 携帯性:7〜8.8インチの本体は通勤バッグにも入り、どこでも起動して作業やゲームが可能です。
- 汎用性:Windows 11ベースなら、SteamやXboxアプリ、Adobe系、Officeなど普段の環境がそのまま動きます。
- 進化する性能:RDNA 3世代のRadeon 780MやIntel Arc内蔵GPUの進歩で、設定を詰めればAAA級タイトルもプレイ可能です。
- 据え置き運用:USB4/Thunderbolt 4やOCuLinkによるeGPU接続に対応する機種なら、自宅ではデスクトップ級の描画性能に拡張できます(代表例:GPD WIN Max 2のOCuLinkなど。参考:The Verge)。
一方で、小型ゆえの課題もあります。
- バッテリー駆動時間:高TDPで動かすと減りが早く、長時間ゲームにはモバイルバッテリーや電源確保が前提になります。
- 入力と操作感:狭いキーボードや小型スティックは慣れが必要です。
- 発熱・騒音:薄い筐体に高性能を詰め込むため、冷却の出来とファン制御が快適さを左右します。
2025年のUMPC主要トレンド(ざっくり把握)
- CPUの主役はRyzen 7 8840UとCore Ultra:Ryzen 7 8840UはRyzen AIを内蔵しつつ780M iGPUで安定したゲーム性能を発揮します。Core UltraはNPU搭載とIntel Arc iGPUでAI・動画周りが強いのが持ち味です(MSI Claw仕様参照)。
- 大容量バッテリーの波:ASUS ROG Ally Xの80Whは携帯機として破格の容量で、可搬性と持ちのバランスが改善しました(ASUS公式)。
- 8.4インチ級の見やすさ:Lenovo Legion Goの8.8インチやAYANEO KUNの8.4インチは作業性・可読性が高く、携帯と据え置きの中間を狙えます(Lenovoデータシート、AYANEO KUN)。
- eGPUとOCuLink:USB4より帯域効率に優れるOCuLink対応の機種やドック(GPD G1等)が増え、自宅ではデスクトップ級、外ではモバイルという二刀流運用が現実的になりました(GPD G1)。
比較の見方(ここを押さえれば失敗しない)
- 画面サイズと解像度:7インチは最小限の携帯性、8〜8.8インチは操作性・表示情報量が増えます。高解像度は文字が小さくなるためスケーリングの設定も重要です。
- 重量と握りやすさ:700gを超えると片手保持は厳しく、長時間プレイで疲れやすくなります。左右グリップ形状やボタン配置もチェックしましょう。
- 冷却とTDP:30W超でブースト可能でもファン音と温度が上がります。自分のプレイスタイルに合うパワー設定(15〜25W中心など)を把握することが大切です。
- I/Oと拡張性:USB4/Thunderbolt 4でドック経由の多画面やeGPUに発展可能。OCuLink対応なら帯域面で有利です。microSDの速度規格(UHS-II/SD 4.0)も地味に効きます。
- バッテリー:公称Whと自分の想定TDP、画面輝度を掛け合わせた実運用の持ち時間をイメージしましょう。
用途で変わる「最適解」:タイプ別の考え方
- 持ち歩き最優先:500〜650g台・7型前後・薄型が快適です。短時間の作業やインディー中心のゲームなら十分な満足度が得られます。
- 映像美・作業性重視:8〜8.8インチ・高解像度・大型バッテリー搭載機が有利です。表示情報量が増えるため、出先での編集作業も捗ります。
- 据え置き併用:USB4/Thunderbolt 4やOCuLinkでeGPU接続できるモデルなら、自宅ドックでデスク環境に近づけられます。GPD G1などのeGPUドックは有力な選択肢です(GPD G1)。
- 長時間ゲーム:80Wh級のROG Ally Xや75WhのAYANEO KUNなど大容量バッテリー機が頼もしいです(ASUS、AYANEO)。
2025年おすすめUMPC
ASUS ROG Ally X

ASUSの最新ハンドヘルドゲーミングPC「ROG Ally X」は、前モデルから大幅に進化したバッテリー容量と冷却性能が特徴です。
Ryzen Z1 Extremeを搭載し、AAAタイトルでも安定したパフォーマンスを発揮。
7インチ120Hzディスプレイは映像表現が鮮やかで、USB4や専用ドックを利用すれば外部GPUや周辺機器との拡張性も高い一台です。
おすすめポイント
- 80Whバッテリーで携帯機随一のスタミナ。長時間の外出プレイに強いです(公式)。
- フルHD/120Hzパネルと改善されたエルゴノミクスで快適に操作できます(公式)。
- USB-C×2など拡張性が増し、ドック運用との相性が良好です(ASUS記事)。
スペック表
ASUS ROG Ally X | |
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形状 | ハンドヘルド |
CPU | Ryzen Z1 Extreme系 |
画面 | 7型 / 1920×1080 / 120Hz |
バッテリー | 80Wh |
重量 | 約600〜700g台 |
拡張性 | USB4 / ドック |
公式情報 | ASUS |
Lenovo Legion Go

Lenovo初のハンドヘルド機「Legion Go」は、着脱式コントローラーと大型8.8インチディスプレイが特徴の意欲作。
高解像度かつ144Hzのリフレッシュレートに対応しており、迫力ある映像体験を実現します。
持ち運びには重量感がありますが、据え置き感覚でも楽しめる万能機で、UMPCとしての新しい遊び方を提案してくれるモデルです。
おすすめポイント
- 8.8インチ/2560×1600/144Hzの大画面で見やすく、着脱式コントローラーで多彩に活用できます(データシート)。
- 49.2Whバッテリーとキックスタンドで動画・配信視聴やクラウド用途にも最適です(同上)。
- Windows環境の自由度が高く、周辺機器と組み合わせた据え置き運用がしやすいです。
スペック表
Lenovo Legion Go | |
---|---|
形状 | ハンドヘルド(着脱式コントローラー) |
CPU | Ryzen Z1 Extreme |
画面 | 8.8型 / 2560×1600 / 144Hz |
バッテリー | 49.2Wh |
重量 | 約854g(コントローラー付) |
拡張性 | USB4 / ドック |
公式情報 | Lenovo |
GPD WIN 4(2024)

GPDが展開するスライド式キーボード搭載のUMPC「WIN 4」は、ポータブルながら本格的なPC操作とゲーム体験を両立しています。
Ryzen 7 8840Uを搭載し、6インチクラスのコンパクトサイズで持ち運びが容易。
RPGやシミュレーションなどキーボード入力を活かすゲームに特に向いており、ユニークな形状が他機種との差別化ポイントです。
おすすめポイント
- Ryzen 7 8840U搭載で携帯サイズながら高い3D性能を実現します(レビュー)。
- スライド式物理キーボードでゲームと文字入力の両立がしやすいです。
- USB4経由でドックや外部ディスプレイ活用も柔軟です。
スペック表
GPD WIN 4 (2024) | |
---|---|
形状 | ハンドヘルド+スライドキーボード |
CPU | Ryzen 7 8840U |
画面 | 6型台クラス |
バッテリー | — |
重量 | — |
拡張性 | USB4 / 一部eGPU |
公式情報 | GPD |
GPD WIN Max 2(2025)

「WIN Max 2」はクラムシェル型UMPCのフラッグシップであり、10.1インチの大画面を搭載したラップトップ寄りの設計が特徴です。
Ryzen系CPUを採用し、ゲームだけでなくビジネス用途にも活用可能。
2025年モデルは新たにOCuLinkを搭載し、外部GPU接続による拡張性が大幅に強化されています。
万能性を求めるユーザーに最適です。
おすすめポイント
- 10.1インチ級の広い表示領域で作業やエミュ用途が快適です。
- OCuLinkポートを標準搭載し、GPD G1等のeGPUと組み合わせてデスクトップ級に強化できます(公式)。
- キーボード・スティック・トラックパッド内蔵で万能な二刀流マシンです(レビュー)。
スペック表
GPD WIN Max 2 (2025) | |
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形状 | クラムシェル |
CPU | Ryzen系 |
画面 | 10.1型クラス |
バッテリー | — |
重量 | — |
拡張性 | OCuLink搭載 |
公式情報 | GPD |
GPD Pocket 4

「Pocket 4」はGPDの小型ノートPCシリーズの最新作で、Ryzen 7 8840UやRyzen AI 9 HX 370を選択可能なハイエンド仕様。
8.8インチディスプレイを搭載し、モバイル作業からゲームまで幅広く対応できます。
Thunderbolt 4や専用モジュールによる拡張性も高く、コンパクトながらパワフルなUMPCを求める層に人気のモデルです。
おすすめポイント
- 8.8インチのクラムシェルUMPCで、タイピングと持ち運びのバランスに優れます。
- Ryzen 7 8840UやRyzen AI 9 HX 370構成、最大64GBメモリなど強力な選択肢があります(公式、GPD Store)。
- Thunderbolt 4や拡張モジュール対応でビジネス用途にも拡張しやすいです。
スペック表
GPD Pocket 4 | |
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形状 | クラムシェル |
CPU | Ryzen 7 8840U / Ryzen AI 9 HX 370 等 |
画面 | 8.8型 |
バッテリー | — |
重量 | — |
拡張性 | Thunderbolt 4 / 拡張モジュール |
公式情報 | GPD |
AYANEO KUN

「AYANEO KUN」は、8.4インチの大画面と75Whの大容量バッテリーを備えたハンドヘルドUMPCです。
Ryzen 7 7840Uを搭載し、重厚な3Dゲームも快適に動作。
高精細な2.5Kディスプレイと独自のTouchTAPMagic機能により、操作性も向上しています。
長時間プレイに適した設計で、UMPCの中でも最上位クラスの存在感を誇ります。
おすすめポイント
- 8.4インチ/2.5K表示と75Whの超大容量バッテリーで屋外でも頼もしいです(公式)。
- 最大54W TDPの放熱設計をうたい、高負荷ゲームにもチャレンジできます(同)。
- 独自のTouchTAPMagicタッチパッドで操作性を拡張できます。
スペック表
AYANEO KUN | |
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形状 | ハンドヘルド |
CPU | Ryzen 7 7840U系 |
画面 | 8.4型 / 2.5K |
バッテリー | 75Wh |
重量 | — |
拡張性 | TouchTAPMagic 等 |
公式情報 | AYANEO |
AYANEO AIR 1S

「AIR 1S」はAYANEOシリーズの軽量モデルで、約450gの本体重量が大きな魅力。
Ryzen 7 7840Uを搭載しつつ、有機ELディスプレイによる鮮やかな映像を楽しめます。ポータブル性を極限まで追求した設計で、通勤や外出時に気軽に持ち運べるのが強み。
手軽に高性能UMPCを体験したいユーザーにおすすめです。
おすすめポイント
- 軽量クラスの有機ELハンドヘルドで発色とコントラストが高いです(公式)。
- 携帯性が抜群で、インディーやレトロ、動画視聴との相性が良好です。
- USB4経由のドック運用で据え置き化もスムーズです。
スペック表
AYANEO AIR 1S | |
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形状 | ハンドヘルド(軽量) |
CPU | Ryzen 7 7840U系 |
画面 | 有機EL |
バッテリー | — |
重量 | 約450g級 |
拡張性 | USB4 |
公式情報 | AYANEO |
MSI Claw A1M

MSIが送り出す「Claw A1M」は、Intel Core Ultraシリーズを搭載した初のハンドヘルドUMPCです。
7インチフルHD/120Hzディスプレイを備え、滑らかなゲームプレイを実現。
53Whバッテリーと約675gの重量は携帯性と性能のバランスが取れており、Thunderbolt 4対応で拡張性も確保。
MSIらしい高品質設計が魅力の新星です。
おすすめポイント
- Intel Core Ultra 7 155H等のIntel Arc構成で、AI/NPUや動画エンコードに強みがあります(MSI)。
- 7インチ/1080p/120Hzと53Whバッテリーのバランスで、普段使いにちょうど良いです(MSI)。
- Thunderbolt 4/USB4経由のドックや外部出力で拡張しやすいです。
スペック表
MSI Claw A1M | |
---|---|
形状 | ハンドヘルド |
CPU | Intel Core Ultra 7 155H 等 |
画面 | 7型 / 1920×1080 / 120Hz |
バッテリー | 53Wh |
重量 | 約675g |
拡張性 | Thunderbolt 4 / USB4 |
公式情報 | MSI |
eGPUで“持ち歩けるデスクトップ”化:USB4とOCuLink
自宅ではeGPUをつないで4Kゲーミング、外ではモバイルという二刀流はUMPCの醍醐味です。
方式は主にUSB4/Thunderbolt 4とOCuLinkの2系統があり、帯域やレイテンシの点でOCuLinkが優位とされます(PC Gamer、XDA)。
GPD G1のようにOCuLinkとUSB4の両対応eGPUドックも登場し、対応機なら63Gbps級の実効帯域でGPUの力を引き出しやすくなりました(GPD)。
一方で、ROG Ally XなどUSB4運用に最適化した機種もあり、取り回しの良さや互換性の広さではUSB4/Thunderboltが便利です(ASUS)。
なお、GPD WIN Mini 2024はOCuLink非搭載となった点は要注意です(GPDニュース)。
「据え置き時は最強」「外では軽快」のメリハリ運用を狙うなら、機種選び時にポート仕様とケーブル/ドックの入手性を必ず確認しましょう。
買う前にもう一押しチェックしたいポイント
- ストレージ規格:2230か2280かで増設の自由度が変わります。予算に余裕があれば最初から1TB以上が安心です。
- RAM容量:ゲームと作業の両立やブラウザ多タブなら32GB以上が快適です。
- microSDの速度:UHS-II/SD 4.0だと配信視聴や軽作業の体感が変わります。
- スティック/トリガー:ホールエフェクト対応はドリフト耐性に優れ、長期の安心感があります。
- メーカーのアップデート/保証:ファーム更新の頻度や国内対応状況も長く使ううえで重要です。
用途別の最適解まとめ
- “長時間モバイルで遊びたい”人:ROG Ally X、AYANEO KUN(大容量バッテリー)がおすすめです(ASUS、AYANEO)。
- “据え置きで最強にしたい”人:GPD WIN Max 2+GPD G1(OCuLink)でデスクトップ級へ(GPD、GPD)。
- “軽さ/携帯性が命”:AYANEO AIR 1SやGPD WIN Mini 2024が日常携行に向きます(AYANEO、GPD)。
- “文字入力や出先作業も妥協したくない”:GPD Pocket 4やWIN Max 2などクラムシェル系が快適です(GPD)。
- “Intel ArcやNPUを試したい”:MSI Claw A1MはIntel Core Ultra構成でAIや動画エンコードの相性が良好です(MSI)。
注意点:尖った最新機の選択
一部では超高性能APUや外部電源前提のコンセプト機も登場しています。
携帯性やバッテリーの常識を超える一方、取り回しや価格、用途適合性の見極めがよりシビアになります。
「スペック値」だけでなく「自分の使い方」に落とし込んで検討しましょう。
まとめ
UMPCは「どこでも開けるWindows」と「必要十分な3D性能」を手のひらサイズに凝縮した最高の遊び道具であり、頼れる相棒です。
2025年は、80Wh級バッテリーやOCuLink eGPU対応など、モバイルと据え置きの垣根がさらに低くなりました。
本記事の比較軸をもとに、自分のライフスタイルに合う形状・サイズ・拡張性を見極めれば、買ってから「これじゃなかった」と後悔することはぐっと減ります。
あなたの「最適解」が見つかったら、あとは遊ぶだけです。
UMPCで遊べるSteamおすすめゲームもまとめていますので、良かったらこちらもお読みください。
UMPCの特性を活かした、オフラインでも遊べるコントローラー対応ゲームを紹介しております。
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